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大切な方を失ったご遺族の方へ

複雑性悲嘆とは?

悲嘆という言葉は、「悲しみ」、「嘆く」という2つの文字から成り立っています。悲しみとは、大切な何かを失った時に起こる「感情」のひとつです。もしあなたが深い悲しみを経験しているとするならば、失った対象があなたにとって大切で、つながりが強かったことを表しています。このような時、人は胸を痛め、涙を流しますが、古くから人はこのような時、悲しみを「共有」し、「表現」する、つまり「嘆く」ことをしてきたというのです。「嘆く」とはネガティブなイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそうではありません。葬儀や一回忌などの儀式は、共に悲しみを共有し、それを表現する場として人が集いますが、人はこのような期間を古くから伝統として守り通してきました。その理由のひとつは、ふと故人を思い出たり、新たな生活に取り組む中で、悲嘆が徐々に和らいでいくからなのです。

ところが、何らかの理由で、この悲しみがなかなか収まっていかず、生活に支障を来すことがあります。専門家たちは、この状態を複雑性悲嘆と呼んでいます。日本での調査研究は、死別を経験した2.4%くらいの人がこのような状態にあると報告しています。葬儀を終えて数年経つけれども葬儀のときと変わらない悲しみがある、故人への思いが強すぎるために生活が立ち行かないというような状態は、複雑性悲嘆である可能性があると言えます。複雑性悲嘆は、医療の中で病気として認識されてはいませんが、うつや自殺念慮などの心の面や、高血圧、心疾患などの身体面に影響することがあることから、回復には適切な支援が必要であるとの認識がもたれるようになってきています。米国精神医学会は、故人に向けられる思いが毎日続いている、死に対する感情が強すぎる、または麻痺している、それを避けたい思いが強い、これらのことが理由で社会生活や仕事に支障を来している、文化的に許容される悲嘆の範囲を超えているなどを複雑性悲嘆の症状にあたるとしています。

大切な存在を失う時に、悲嘆を経験することはごく自然なことであり、悲嘆に伴う心痛な感情への向き合い方や、喪失体験後の生活に戸惑いを感じることも決して珍しい事ではありません。ただ、なかなか先が見えてこず、あまりに辛い状況が続いているならば、安心して話せる方や、専門の精神医療や臨床心理の機関に相談してみるのも方法のひとつです。お一人だけで悩まず、適切な助けを得ていたくことが大変重要です。